TP について知る

TPとはなんでしょうか?

ティーチング・ポートフォリオ(TP)とは、教員の教育活動について記述された本文とその記述を裏付けるための根拠資料の集合体です。「Teaching Dossir(ティーチング・ドシエ)」という名称でカナダで始まり、北米やヨーロッパでは、教員が教育活動について振り返り、業績を可視化する文書として普及しています。

下記にあるのは、紙媒体で作成されたTPです。本文の後ろに、タブで整理された根拠資料が添付された、1冊のファイルの体裁です。分量としては本文は8-10ページ程度とされています。

TPを作成する目的はなんでしょうか?

TPの作成目的は、大別すると教育業績の可視化と教育の改善です。

教育業績の可視化

TPは理念や方針、方法といった一定の構造を持っており、それらにしたがい一貫性をもって教育活動を記述する文書です。単なる事実の列挙ではなく、その活動の特徴や優れた点などを記述することから教育活動の「質」を扱うことができます。また、根拠資料で裏付けることで、教育業績の評価資料としての公正性を担保します。

既に述べた通り、欧米では既に普及しており、教員としての採用や昇任時などの人事のための資料として用いられています。

教育の改善

TPは教育活動についてのリフレクションにもとづいて作成されていきます。この作成プロセスにおいて、自分の教育活動を俯瞰し、活動の背後にある方針や理念を明確にし、この理念を軸に活動を捉え直すことで、自分の理念と現実の活動との齟齬や不足について気づくことができます。そして、これらを解決しようとする方策が目標として定められることで、改善に向けて一歩を踏み出すことができます。

理念を明確にし、この理念を軸に活動を捉え直すことで、自分の理念と現実の活動との齟齬や不足について気づくことができます。そして、これらを解決しようとする方策が目標として定められることで、改善に向けて一歩を踏み出すことができます。

どうやって作成するのでしょうか?

TPは、作成するのに13-17時間かかるとされています。2日半程度、集中的に時間をとって、メンターと呼ばれる作成の支援者に伴走してもらいながら作成することをおすすめします。

書籍

  • 栗田佳代子 (2018) 「ティーチング・ポートフォリオ,アカデミック・ポートフォリオ」(分担執筆)(児玉善仁, 赤羽良一, 岡山茂, 川島啓二, 木戸裕, 斎藤泰雄, 舘昭, 立川明(編集委員)『大学事典』平凡社)pp.659-660
  • 栗田佳代子, 吉田塁, 大野智久 (2018) 「教師のための『なりたい教師』になれる本!」学陽書房, 137ページ
  • 栗田佳代子 (2011) 「第5章3節1 メンターに対するスーパーバイザーの役割」(分担執筆)(大阪府立大学高専ティーチング・ポートフォリオ研究会(編)『実践 ティーチング・ポートフォリオ スターターブック』NTS出版) pp.103-105
  • 栗田佳代子 (2010)「アカデミック・ポートフォリオ」(分担執筆)(大学評価・学位授与機構(編著)『大学評価文化の定着』ぎょうせい) pp.78-84
  • 大学評価・学位授与機構(監訳), 栗田佳代子(訳),ピーター・セルディン,エリザベス・ミラー(著)
    (2009)『アカデミック・ポートフォリオ』玉川大学出版部 364ページ (Peter Seldin and J. Ellizabeth Miller (2008) The Academic Portfolio: A Practical Guide to Documenting Teaching, Research, and Service, Jossey-Bass Higher and Adult Education)
  • 栗田佳代子 (2008)「教育業績記録の作成」(分担執筆)(大学評価・学位授与機構(編著)『大学評価文化の展開』ぎょうせい) pp.34-44
  • 大学評価・学位授与機構監訳,栗田佳代子訳,ピーター・セルディン著 (2007)『大学教育を変える教育業績記録』 玉川大学出版部, 388ページ (Peter Seldin (2004) The Teaching Portfolio: A practical guide to improved performance and promotion/tenure decisions 3rd ed. Anker Publishing Company, Inc.)

論文

  • 栗田佳代子 (2020) 大学教員の教育業績評価の方法としてのティーチング・ポートフォリオ, 大学評価研究, 19, 55-64
  • 吉良直, 栗田佳代子, 吉田塁 (2019) 米国研究大学における大学院生対象のティーチング・ポートフォリオ/ステートメント作成支援に関する研究-日本への示唆-, 東洋大学文学部紀要(教育学科編), 72, 1-8
  • 北野健一, 東田卓, 栗田佳代子 (2018) 2016 年度スタッフ・ポートフォリオ作成ワークショップ開催報告,
    大阪府立大学工業高等専門学校研究紀要, 51, 71-7
  • 栗田佳代子 (2017) 教育の質を問うティーチング・ポートフォリオをあらためて俯瞰する, 看護教育, 58(11), 886-891 招待
  • 栗田佳代子, 吉田塁 (2017) 教育の改善につながるリフレクションの方法, 看護教育, 58(7),540-546 招待
  • 北野健一, 栗田佳代子 (2016) ティーチング・ポートフォリオの効果検証:外部メンターと内部メンターの違い, 日本高専学会誌, 21(3), 33-36 査読有
  • Yoshida, L., & Kurita, K. (2016) Development of a Graduate Student Academic Portfolio, Educational Technology Research, 39(1), 111-123 (DOI: 10.15077/etr.40080) referred
  • Yoshida, L., & Kurita, K. (2016) Evaluation of Structured Academic Portfolio Chart and Workshop for Reflection on Academic Work, Procedia Computer Science, 96, 1454-1462 (DOI: 10.1016/j.procs.2016.08.191) referred
  • 吉田塁, 栗田佳代子 (2016) ポートフォリオ作成を支援するメンタリングチェックシートの開発と応用, 大学教育学会誌, 38(1), 172-180 査読有
  • 東田卓, 金田忠裕, 早川潔, 鯵坂誠之, 吉田塁, 栗田佳代子 (2015) 2014 年アカデミック・ポートフォリオ作成ワークショップ報告, 大阪府立大学工業高等専門学校研究紀要, 49, 55-62
  • 北野健一, 栗田佳代子 (2015) ティーチング・ポートフォリオの効果検証:高専教員と大学教員の違い, 日本高専学会誌, 20(3), 57-60 査読有
  • 吉田塁, 栗田佳代子 (2015) 大学院生版アカデミック・ポートフォリオの開発, 日本教育工学会論文誌, 39(1), 1-11 査読有
  • 東田卓, 金田忠裕, 中谷敬子, 栗田佳代子 (2014) 2013年アカデミック・ポートフォリオ作成ワークショップ報告, 大阪府立大学工業高等専門学校研究紀要, 48, 37-42
  • Kurita, K. (2013) Structured strategy for implementation of the teaching portfolio concept in Japan, International Journal for Academic Development, International Journal for Academic Development, 18(1), 74-88 (DOI :10.1080/1360144X.2011.625622) referred
  • 金田忠裕, 北野健一, 東田卓, 中谷敬子, 栗田佳代子, 溝手朝子, 保福一郎, 清水栄子, 吉田香奈, 加藤由香里 (2013) 2012年度アカデミック・ポートフォリオ作成ワークショップ報告, 大阪府立大学工業高等専門学校研究紀要, 47, 43-48
  • 栗田佳代子, 加藤由香里, 井上史子, 尾澤重知, 北野健一, 城間祥子, 皆本晃弥 (2010) ティーチング・ポートフォリオ:導入の意義と可能性, 大学教育学会誌, 32(2), 55-59
  • 江本理恵, 尾澤重知, 加藤由香里, 酒井陽一, 堀井祐介, 栗田佳代子, 古賀暁彦 (2009) ラウンドテーブル 教育改善のための教育情報アーカイブス −オンライン授業公開から電子ティーチング・ポートフォリオまで−, 大学教育学会誌, 31(2), 88-91